中学受験で成功する「黄金法則」とは

日能研は6年時以下のテキストを用います。

  • 本科教室テキスト(ステージⅣ)2月~7月
    合格力完成教室(ステージⅤ)9月~12月(上位クラスは「難問」版)
  • 「栄冠への道」(家庭学習用)
  • 「計算と漢字」
  • 「日特問題集」前期日特
    「中学入試試験問題集(通称:銀本)」後期日特

以上の教材に加えて、毎週テストがあり、上位クラスの通塾日数は日特を含めると週に5日、日曜日は午前午後ともにつぶれてしまうため、日能研生は振り返りを含めた自学自習の時間をどう確保するかが合否の分かれ目になるともいえます。

まずは一か月単位でおおまかな学習プランを立てましょう。

以下、女子学院に合格する力を養うため [授業およびテストの活用方法]  [記述力強化方法] [日特の活用方法]  [他塾のテスト活用] [過去問の扱い方] の順にご説明いたします。

授業およびテストの活用方法

① 授業で扱った問題の要旨・要約文を書く。

これは授業の復習に最適な方法の一つです。

初見の問題文で要旨・要約文を書こうとすると時間がかかって大変ですが、授業で扱った問題文の場合、授業内容を思い出し、どこが大事か再確認することがそのまま復習になり、授業効果が上がる、という利点があります。

まとめようとすると、全体の構成、論旨の流れ、読みの強弱、主副の関係などを考えて情報整理し、取捨選択し、文章として整えなければなりません。まとめる目安は一題につき120字前後。本来は文章の長さ、内容によってまとめる分量が大きく変動しますが、復習をメインとした学習であり、まとめようと四苦八苦する過程自体が大切なので、緻密さは必要ありません。ある程度の分量を書いて書き直したくなったら、消しゴムを使わずに←でとなりに新たに書き出しましょう。こうすることで、自分のまとめ方の変遷がわかり、見返した時に削ったポイントがどこかはっきりします。

所要時間1題15分程度。最大でも20分で終えること。上位クラスは授業時2つの文を扱うことが多いので、30~40分が目安です。これ以上は時間の無駄です。作業の過程そのものが学習なので、出来は二の次です。ただし、書けない場合は授業が無駄になっているということなので、保護者のチェックは欠かせません。授業内容が頭に入っていない状態は、通塾自体を考慮する必要があるかもしれません。また、出来は二の次と言いましたが、書いたものは必ず担当講師に添削してもらいましょう。授業で扱った素材文の要旨・要約文の添削依頼を教室担当に伝え、教室担当から担当講師に話を通してもらいます。日能研の場合、教室主体で子どもとかかわっているため、直接講師に交渉せず、あくまで教室のスタッフに相談することが大事です。文章の整え方、論旨の正誤程度のチェックで構わない旨を伝えておきましょう。授業後に前回の授業分の要旨・要約文を目の前で添削してもらいます。もちろん、家に帰って、添削箇所から反省点を明確にしましょう。

書けなかったときは、書いたところまでの分、またはメモ書きの状態で持っていき、どうやってまとめればよいかアドバイスを仰ぎましょう。ほかのお子さんとは別オーダーをして講師の手をわずらわすのですから、一番避けるべきは「持っていったり行かなかったり」という気まぐれな行為です。相手にお願いした以上、本気であることを知らせるためにも、毎回きちんと持っていく、それが集団塾でのマナーであると思います。お子さんにそれだけの覚悟を求めて、国語の力アップに塾を利用しましょう。なお、「そんなことは必要ない」等、もっともらしい言い訳とともに断られた場合、その教室、講師はハズレと言わざるをえません。そのときは国語力アップに必要な学習方法を具体的に提示してもらいましょう。

私は、指導時には必ず家庭学習における授業の復習方法とその効果を明確に提示しています。担当講師があいまいな一般論でお茶を濁すような対応では難関校の合格はあり得ません。

② テキストとテストを利用して語彙数を増やす

ボキャブラリーノートを一冊作りましょう。

国語の授業のあった日、テストのあった日は必ず初めてであった語、見知ってはいるが意味があいまいな語をそのノートに書き出し、意味・用法を添えます。できるなら、自分でその語を使った短文を作り、ある程度たまったら、担当講師にチェックしてもらいましょう。(これはお子さんから直接担当講師にノートを持っていく形で十分です。「間違った短文づくりをしていないか、見てください」とお願いしましょう。あまり分量が多いとその場で見てもらえませんので、自信のないものだけ印をつけておき、そこだけ見てもらう形をとります。)

たとえば小学生が間違えやすい語に「いそいそと・そそくさと」というような様子を表す語(擬態語)があります。「よもや・いわんや」といった文語的副詞も苦手とするようです。ボキャブラリーに対する意識を持つのは早ければ早いほど入試本番での累積が大きいでしょう。そして言葉への意識は、一語一句をゆるがせにしない正確に読む力を育てるのに有効なのです。

日能研のテキストやテストは入試語彙の宝庫です。ノートを作ることで自分だけのボキャブラリー辞典ができます。役立てましょう。

③ 漢字は読み書き、意味、部首まで

「計算と漢字」の漢字は、社会科の漢字も含んでいます。毎日決まった時間に決まった量をこなしましょう。毎日のことですから、時間は10分程度で構いません。

9月から始まる「合格力完成教室」テキストには巻末に「合格完成語句」が載っています。この漢字部分は受験の基本ですから、早い時期に読み書きできないものだけピックアップして効率よく覚えてしまうことです。読みとして出題されていても書けるようにしましょう。また、途中にも同音異義語、同訓異字が出ているので見落とさずチェックしましょう。

④ テストを利用した語句知識と文法知識の強化

テストの振り返りノートとして、間違った文法知識や語句知識を書き抜いておくノートを作りましょう。定期的に見直して記憶の定着を図ります。

 

以上、日能研の授業コマ数、テストの多さをプラスに持って行けるよう、復習方法についてお話しいたしました。

授業内容の消化、テストで発見された知識の穴を随時埋めていけば、その演習量の多さから弱点を発見しやすく、その点、他塾にはない強みとなります。

逆にスケジュールに追われて学んだことを消化したり、発見された苦手分野の補強をする家庭学習の時間がとれないようであれば、授業コマ数、テストの多さは課題の積み残しにしかなりません。

日能研の有効活用はスケジューリングと家庭学習の効率化アップにあるといっても過言ではないと思われます。

その効率化のため、先の授業の要旨・要約文をしっかり添削してもらえるならば、家庭での読解問題の演習量は「栄冠への道」で十分です。授業時に学んだ方法で線引きしつつ解法を明確にしながら解いてください。

女子学院で出題される素材文は難度の高いものが多いのですが、6年時の前半は基礎固めに徹し、むしろ記述力の強化に的を絞ったほうがよいのです。

では、記述力強化方法についてお話します。

記述力強化方法

日能研では選択講座として前期・後期別に「記述演習講座」があります。

これは文字通り演習形式ですので、家庭学習を塾で行うつもりでとるには良い講座といえます。特に記述力対策が十分でない前期はお勧めです。毎回授業内、もしくは授業後に講師による添削つきの講座です。

家庭での記述の練習時間のかわりというつもりで参加して、復習は添削された箇所をざっと見返す程度でかまいません。この講座の復習すらきっちり行うとオーバーワークです。あくまでも家庭で記述練習する代わり、というくらいの軽さで参加することをお勧めします。目覚ましい効果は期待できませんが、意外と盲点となる記述の基礎知識は身につきます。ただ、ある程度書けるお子さんには内容が易しいため、かえって時間の無駄となります。テストのときに記述が全く書けないお子さんにお勧めです。

上位校の記述強化対策として後期に「記述完成ツール」という問題集が配布されます。これに関しては校舎やクラスによって取り扱いが異なり、上位クラスでなければ配布そのものがありません。

この「記述完成ツール」は難関校記述対策としては非常に優れています。興味のある方は、教室にお願いして一度見せてもらうといいかもしれません。

ただ惜しむらくは自学自習するには不向きという点。

必ず指導者が必要な教材です。その代り指導者がいれば、問題の難度が難関校には理想的であること、素材文が魅力的であること、字数制限に応じて書く内容の情報の種類の 増減を学ぶには最適の設問であることから、記述力の強化が期待できます。

教室でこのテキストを使った講習や添削を行っている場合、必ず参加しましょう。

こういった選択講座や特別な対策を講ぜず、記述力を上げる方法もご紹介しておきます。

それはテスト時の記述問題を活用する方法です。

それではテストを利用した記述方法についてご説明いたします。

記述力アップのためのテスト活用方法

記述問題で間違ったもの、空欄であったものに関しては必ずやり直しましょう。これは正答率が低くても必ず解きなおしてください。その際、得点となるポイント要素を線引きして確かめましょう。ポイント要素の数は、記述についた採点の○×の数から1引いた数になります。(最後の○×は表記に対するもの)。そしてそれぞれの要素が、本文中のどこにあったかを確かめましょう。そして、そのうえで設問文を読み直し、本文にあったポイントの書かれたところを読み直し、模範解答を見ずに解答を作成します。おそらく模範解答に似た解答が作れるはずです。この「似た」というところが実は目のつけどころで、自分と模範解答の表現の違いに着目し、違いの意味を考えます。例にとりましょう。

模範解答
予測不可能な未来に向かって、自分の知識を用いながら臨機応変に柔軟な発想を用いて、自分なりの解決方法を見つけられるようにするとともに、失敗後、どう行動すべきかを適切に考えられるようなプラス思考を持つこと。
生徒解答
予測できない局面において、自分の持っている知識を使って臨機応変に柔軟な対応をし、解決方法をみつけて、失敗後、どう行動すべきかを適切に考えるようにし、またプラス思考を持つこと。

前半部はほぼ同じ言いかえですが、傍線部は異なります。

模範解答では、「プラス思考=失敗後にどう行動すべきかを適切に考えるようにすること」であり、生徒解答では「失敗後、どう行動すべきかを適切に考えるようにすること」と「プラス思考を持つこと」が並立されています。小さなことですが、生徒解答では本文を正確に読みとったことにはなりません。このような解答を書くお子さんは実は要注意なのです。彼らは「大事そうと思われるところ」への嗅覚は優れています。ある種、文章パターンが頭に入っているのですね。これはこれで重要なスキルではあります。問題はここから。「大事そうと思われるところ」が全体の中でどう機能しているかの思考を放棄しているのです。ですから「大事そう」なパーツをつないで並べることが彼らにとっての記述のコツなのです。

ご存じのとおり、パーツの論理的構築ができなければ、読解とはいえません。にもかかわらず、この誤った方法で記述問題を乗り切ってきた難関校志望のお子さんは、6年の後半戦から志望校の過去問記述で得点できず、苦戦します。記述力が重要な難関校問題にはこの方法は通用しないからです。

ところが、日能研では、「記述力模試」以外の模試、特にカリテでは解答にポイント制をとっています。つまり、パーツがそろえば、並べ方つなげ方が非論理的であっても○になってしまいやすいのです。その結果、読めているが本文の言葉を自分の言葉に置き換えて抽象化が行き過ぎた解答が×になり、全く読めてはいないが、キーワードにかすった解答のほうが部分点をもらえる、といった事例が起こりやすくなります。中堅校や一部の上位校の記述問題であればこのやり方である程度対応できても、難関校の記述では対応できません。もちろん抽象化が行き過ぎた解答を書くお子さんも設問の条件に合わないという点で得点できないのはもっともなのですが、後半伸びてくるのは明らかに前者のお子さんです。

テスト後の記述の書き直し、およびその添削はプロにお願いするのが一番効率が良いといえます。疑問があれば、講師に質問に行くことをお勧めします。そのとき、通り一遍の納得のいかない説明をするようであれば、自分の担当講師の不在をねらって、次回から別の国語講師に質問することも可能です。そこでも納得のいく解答が得られないようであれば、塾に期待するのは無理でしょう。外部発注するなり、記述添削の対策を講じる必要があるでしょう。

また、「記述力模試」では、複数の専門講師が解答を吟味して添削しますので、行われるときは必ず受験してください。そしてやり直しをすることです。

日特の活用方法

① 前期日特について

毎回テーマを決め、演習形式で進みます。授業で学んだことを得点と結びつけることができるかの実戦力を養う講座です。体力があり、仲間との競争が好きで慣れない場所でも臆さない性格ならば、受講することによって併願校対策になります。女子学院第一志望の場合、後期日特からは志望校対策に特化しますので、他校の入試問題に幅広く触れられる貴重な講座ともいえます。帰宅後、解いたものを見直し、苦手な設問形式や文章内容を把握することに努めましょう。しかし、日曜日で模試とセットになっているため、受講すると休日の一日がつぶれます。ひと月単位の学習計画で、学んだことを消化する家庭学習の時間があまりとれず、テストの直し、知識の補充確認、記述のやり直し等、するべきことが累積する状態であれば、思いきって受講しないという選択もあります。校舎によっては普段授業を受けている校舎と異なる校舎への移動がありますので、通塾にかかる時間、新しい環境のストレスも無視できません。お子さんの体力・性格・日頃の学習姿勢を考慮に入れて検討すべきでしょう。塾に相談すればまちがいなく受講するメリットのみを説明され、強く勧められます。学習アドバイス、併願校相談等、塾は信頼できるパートナーですし、そうあるべきだとは思いますが、利害の絡む講座選択に関しては、本人の家庭学習状況を把握しているご家庭の判断を優先するべきでしょう。対して、後期の志望校別難関校日特は必ず受講すべき講座です。後期からはさらに多忙になることを考えても、夏休み前のこの時期はうまく学習のサイクルを作っていく調整時期として重要です。無理をしてつめこめば、後半戦への基礎力、気力、体力を損なう結果につながります。集団授業の場合、一律同じことをさせられますが、それがお子さんの現状に必要なものかどうかを判断することが合否を分けます。取捨選択には痛みがつきものですが、優先事項は志望校合格です。学んだことが身にならず、成績が伸び悩んでいる場合は、早めの対処が必要です。弱点の見極め、学習計画のサポートを外部のプロの手に発注するのであれば、まだ時間的に余裕のある6年前半からをお勧めします。

② 後期日特について

言わずと知れた学校別難関日特です。数年前までは偏差値の輪切りで受講資格がかなり厳しかったのですが、近年は志望すれば多少偏差値が足りていなくても(よほどでなければ)受講資格がもらえます。

ただ、学校別の場合、複数クラスになりますので、女子学院の名前が冠してあっても、上位クラスと下位クラスでは演習内容が異なります。教科別ではありませんので、下位クラスでも国語の成績上位者は多くいます。彼らと切磋琢磨する、という意識でとりくみましょう。

女子学院日特の場合、講師も厳選されており、ハズレは少ないといえます。後期日特が始まったら、日特内容の消化を学習スケジュールの優先事項におきましょう。

解説時においては、解法を意識して、どういう手順で正解に至るのか、解法のプロセスを理解できるよう努めましょう。日能研は、授業における仲間との刺激によって知的探求を深めることを標榜しているので、授業内容から逸脱しない限り質問を歓迎しています。わからないときは解法のプロセスについて質問してみることをお勧めします。まずは自身のアプローチ法を述べ、意見をもらってみることから始めましょう。

どうしても性格的に意見が言えない場合は、講師の説明をことこまかにメモします。(すべてが無理なら何問かに絞ってもよいでしょう)。

こうして授業に集中し、帰宅後か授業の翌日までに、テキスト、ノートを見ながら、間違った問題、時間が足りなくてできなかった問題を解き直し、メモ書きを参考に授業時に得た大事だと思われる解法を書き出してみましょう。あわせて、授業内で説明のあったあいまいにしておいた語彙、知識もチェックして覚えてしまいます。これは先のボキャブラリーノート、テストの振り返りノートに書き込みます。

他塾のテスト活用

日能研生は自塾の日程がつまっており、他塾のテストを受けづらい状況ですが、自塾のテストを後日受験にしても、情報の偏りを改善するために、学校別サピックス・オープン(9,11月に実施)を受験することをお勧めします。

特に女子学院の場合、サピックス生は無視できません。自己の位置づけを知るためにも9月にまず受験しましょう。おそらく結果は惨澹たるものだと思われます。なぜなら、やはり問題作成塾の塾生のほうが馴れという意味で有利に働くからです。この結果をふまえて、今の自分に足りない力をテスト結果から洗い出すことが大切です。

そして必ず足りない力を補強するための具体的方策を考えましょう。ここも外注可能な場面です。この補強がうまくいけば、11月のサピックスオープンでは前回よりアップしているはずです。上手に利用しましょう。

過去問の扱い方

過去問を解く時期としては、夏以降となります。方法は塾の方針に従いましょう。ただ、過去問添削は教室や校舎によって質にばらつきがあります。

過去問は添削してもらい、身につけるべき解答技術を学ぶことが肝要です。塾があてにならないようであれば、ここも外注の必要があると思います。過去問は振り返りを徹底することで初めて実践力養成につながるのです。