中学受験で成功する「黄金法則」とは

1.学年別学習法

中学受験は親と子の二人三脚ですが、どの時期になにをやるか、なにをサポートするか。あるいは、どの程度の学力があればいいか。またその把握・管理の方法、それらをお話していきます。

まず、最も重要なのは、現状、生徒さんの学力・意識がどのような状態・レベルにあるのか、という認識です。

ですから、下記に述べる一般論・フレームワークと、実際の生徒さんの状況を照らし合わせてご参考になさってください。

概要は下の図のとおりです。

麻布中学の傾向分析に明らかにしたとおり麻布中学の問題は

A.問題分の中に条件がヒントとして与えられていて、それを利用して解く問題

B.中学受験の基礎的な内容を少しアレンジした問題

の2つのパターンに大別できます。

ですので時期別の学習法としましては、6年生の夏までにBタイプ、つまり基礎的な問題(といっても麻布中学レベルの基礎的内容ですが)を無難に正解できる学力を身につけて、6年生秋以降にAタイプを解く練習をしていく段取りが一般的かと思います。

2.5年生までの学習

◎5年生までは基礎固め

5年生までは、6年生のベース作りがメインのテーマになります。よく、頻出単元にしぼって勉強する生徒さんがいらっしゃいますが、本当に時間が無くなってきた6年生秋以降であれば、やむをえませんが、特に算数は、問題を解いていく局面ごとに、多様なものの見方を試されますから、極力、全般的な学習をこころがけたほうが、結局は近道です。

また時間に余裕のある5年生までだからこそ、志望校への気持ちや、それに伴う学習習慣、集中力のメリハリなど、6年生での勉強を実りあるものにするために、意識の下地作りも重要です。

◎基礎固めの掟(おきて)

麻布中学の算数で、必要な点数をとる、そのために絶対してはいけないのは

問題の内容をよく理解せず、解説を見てしまうこと

です。

この学習法は、もしかすると、目先の小テストの点数獲得や、クラスの昇降という点では、合理的な勉強かもしれません。

しかし、麻布中学が求めている資質を育てていく学習とは対極にある方法です。

4年生・5年生のうちから、解法を暗記する勉強法が習慣になってしまうと、特に6年生秋からのAタイプの問題練習についていけなくなってしまいます。

速さや食塩水の問題に見られるように、問題の内容がわからなくても自動的に解法に当てこめば答えがあってしまう問題も、塾での画一的なテキストでは、よく出ます。しかし、そのような勉強のやり方では、いつまでたっても「本番」の準備になりません。

そこでおすすめしたいのは

できなかった問題のなかでも、なかなか内容が理解できなかった問題をコピーをとるなどして6年生以降の応用期に取り組めるようにファイルしておくこと

です。

◎何が起こったのか理解してください

偏差値の高い低いに関わらず、塾内ポジションの話になってきたときに、生徒が(あるいは親も)目先の点数に我を忘れることが少なくありません。

そのため、ガムシャラ、無我夢中になればなるほど、問題を理解せずに、解法を覚えて点数の帳尻を合わせようとする勉強法になります。

それとは反対の勉強法、すなわち、麻布中学の試験当日に問題を解いてこられる勉強法を紹介します。

① 問題文のなかでポイントとなる部分を書き出す。
  • 条件となるフレーズ・数
  • 問題の流れ(小問同士の関連含む)
  • 何を聞かれているか
② 問題文の要点に印をつける

まずは①を訓練して、そのうち自然な流れで②ができるようになればOKです。

これは国語の設問の読み取りにも言えることですが、読み間違いや読み落としを減らす工夫を習慣づけることは非常に重要です。

テストでは時間の節約を考慮して②で対応できるようにしましょう。

◎解き方をいかに視覚化するか

基礎的な内容の問題でうっかりミスが多い生徒さんは、途中式や図、メモのとりかたに問題があるケースがほとんどです。

家で解いてみるとできる、となると、どうしてもそのまま放置しがち。

逆にいえば麻布中学をはじめとした「途中式を書かせる算数」においては、このようなミスをした問題が非常に良い練習材料になるのです。

具体的には

① 問題の内容に沿って図やメモなどイメージの下書きをします。

自分の書いたイメージを見て解法がわかったら

② なるべく途中式をきっちり書く(式をまとめられればベスト)

ことを練習しましょう。

途中式を書くことに慣れていない生徒さんはA+B=C,C÷D=E、と内容がわかりづらい断片的な式になりがち。この途中式の書き方も練習と工夫で、計算間違いを防ぐものにしていきましょう。

特に、場合の数、規則性、数の性質、条件整理などは

ものすごく問題をアレンジしやすい分野なので解法を丸暗記する価値がほぼありません。

場合の数、規則性、数の性質、条件整理は、解法に至るまでの書き出しを必ずしましょう!

特にまだ基礎の確認が中心となる5年生までの学習で、口当たりのいい解法を塾で教わって、天下を取ったつもりで暗記してみても、受験本番で全く使えません。それだったらテストの点数が悪くても、一問一問意味を確認しながら解いている生徒の方が6年生になってから伸びます。

◎塾で「お客さん」にならないために

また、塾のペースのさばき方として、なるべく授業内にほとんどの内容を理解するようにしてください。場合によっては基礎的な内容を自宅で予習しておくのもよい方法だと思います。先生がいて黒板に書いたものを写して終わり、では「実際に頭が働いている時間」がほぼゼロとなってしまいます。5年生のうちに良い意味で「塾のやることは、もう言われなくてもわかっている」くらいの勉強リズムにしていきましょう!

また、時間に余裕がある5年生のうちに復習リズムも確立していきたいところです。新しく学習した単元は1か月もすれば忘れてしまうもの。ですから、1か月前のものを復習することを心がけてください。

単元ごとの確認テストだけだと「覚えて忘れて覚えて忘れて」となり、その時間、遊んでいた方が良かった、となりかねません。「まだ5年生だから」とおっしゃる保護者の方がいらっしゃいますが、「復習しないとほんとにムダ」となり「5年で何やってたんだ」という展開が目に浮かびますので、ご注意ください!

3.6年生夏までの学習

5年生でうまく段取りができたら、6年生夏休みまでに受験範囲全体をひとまとめしておきましょう。ほとんどの塾のカリキュラムが、夏前までに一通り内容のインプットを終了するてはずになっています。

受験範囲のまとめ・復習のポイント

  1. 苦手範囲の把握と重点的な練習
  2. ファイルしておいた「できない問題」の練習
  3. 5年生でやったところの確認
  4. 6年生前半でやったところの確認

① については塾で定期的に行われるテストや小テストで点数が目立って悪かったところを確認して、基礎的な内容をやり直ししておきましょう。

② をこまぎれの時間にでもきちっと確認できるように、日ごろから問題の管理・整理整頓には気をつかいましょう。

③ については、総合回や、まとめの問題を解いて、ダメなところだけ基礎的内容に戻るなどして効率化を図りましょう。

④ については、5年生の時よりも難しい内容も多いため、夏前までに何度か復習できると良い準備になります。

特に、麻布中学に良く出る、数の性質・規則性、速さ、平面図形などは、重点的に確認していく必要があります。その際に、どのような問題集を使うのか、一般的には

  • プラスワン問題集(東京出版)
  • ステップアップ演習(東京出版)

などが使われているようです。

塾のテキストがどうも、つかいこなせていない。少し気分を変えたい、効率的に学習したい、という生徒さんは、この2冊に専念して、短期間で総復習してもよいかもしれません。そのときも、できなかっただけではなく、なかなかわからなかった問題は、コピーをとりファイルしておいてくださいね!

時間に余裕があれば、四谷大塚80%偏差値で60くらいの学校の過去問を解くなど、実戦練習も少しずつこなせると良い準備になります。

4.6年生秋以降の学習

いよいよ本番の、6年生秋になると、塾のスケジュールも、よりハードになり、日曜日に対策講座が増えるなど、ひたすら問題演習の時期になります。

塾の志望校対策では、志望校の過去問を研究したうえで、他校の問題から類似したものをピックアップしてテキスト・プリントにしていますので、とりあえずは、それをこなしていくことが重要です。

もちろん解く問題の数、すなわち「量」も大事なのですが、やはり麻布中学の特徴を考えますと「なぜそうなったのかの追及」、すなわち勉強の「質」も意識せざるを得ません。

そんな麻布中学の特徴とマッチした問題集が

塾で教える算数 シグマベスト(文英堂)

  • 【数・数量関係】
  • 【量と測定・図形】
  • 【文章題】

です。

レベルは難関中学入試と実践問題集がありますが、どちらも麻布中学向けが多いように思いますし、解説がとても丁寧で、問題集として頼りにできるものだと思います。

さて、6年生の秋になりますと、いよいよ過去問をやることになりますね。

ここで過去問を練習するときの注意事項を挙げておきましょう。

  1. 臨場感を出すため、可能な限り本番と同じ条件で解く
  2. 大体の消化ペースをあらかじめ計画する
  3. 志望校ごとの出題傾向を体で覚えるために過去問を何回も解く
  4. タイプが似ている他校の過去問も練習する
  5. 過去問練習は、可能ならば本番と同じ時間帯をセットして4教科を丸一日使って解いてみてください。

よく「家では解けるのに」という生徒さんがいらっしゃいますが、そういう生徒さんこそ、時間をきっちりセットするなどして「非日常」を作り出したうえでチャレンジしてみてください。

また、4教科ぶっ続けで解くことで、4教科の流れの中で体力をコントロールしながら解く練習になります。

② ですが、麻布中学に限らず、偏差値で同程度の学校でも設問傾向は、かなり異なります。そのため、「大体、この学校のパターンはわかった。時間配分をイメージできる。」となるまで、5年間分を2回程度繰り返すことができれば、ほぼ自分のリズムで当日、受けてこられるでしょう。それを実現するためには、おおまかな過去問の消化ペースを決めておかなければなりません。

③ また、2度目以降の過去問では、より深く、麻布中学独特の(1)を利用して(2)を解くことができていたかなど、入念に自分の思考回路を確認していきましょう。我々も、志望校の過去問指導が、もっとも結果に直結するところですので、非常に重要視しております。

④ 最後に、麻布中学と傾向が比較的似ている学校として、算数は武蔵中学・灘中学(特に2日目)・筑波大付属駒場中学など、数の性質ならばフェリス女学院も上げることができます。

また、実践演習として模擬試験をきちんと受けたほうが練習になります。

サピックス・四谷大塚・日能研の外部生も交えた公開模試は、秋~冬にかけて本番のつもりで勝負していったほうがよいでしょう。特に志望校別の模擬試験はその年の受験生との勝負になるので、前哨戦として目標にしても良いでしょう。