中学受験で成功する「黄金法則」とは

5年生

ことばの力をふやす。

開成中学の入試問題の出典は、高度な語彙を駆使した論説であったり、多彩なテーマの随筆であったり、時代背景や設定の理解を要求する物語文であったり、と読解のためには相当な努力が求められるものばかりである。

そのため、ことばの力を意識的に強化しておきたい。日常使う語彙を越えて、入試水準の出典に対応できるような語彙を、積み上げていきたいところである。

教材・問題に取り組む際には、辞書を使って、ことばの意味調べ、確認をする習慣をつけ、また、語彙を増やすためのドリル系教材などをしっかりこなすことで、着実に使えることばを増やしていきたい。

長い文章を読むことに慣れる。

5年生のうちに、様々な種類の長文を、内容を理解しながら読みきることに慣れていきたい。4年生までは、文章をひとつのまとまりとしてとらえることをしなくても、拾い読みをして設問を解くことができる場合が多い。しかし、難関校の入試問題では、文章をひとつのまとまりとして把握することが求められる。5000字を越える文章を集中して読み通すようなトレーニングに意識的に取り組み始めることで、文章の長さへの対応力をアップさせたい。また、読める文章の種類を増やしていくこと、読みにくいと感じる種類の文章にチャレンジして、読めるようにしていくことが大切である。

素材としては、塾教材の発展的・応用的な文章を用いたり、市販の問題集でも、長めの文章が多くとりあげられているものを選んで、長さを意識した読みのトレーニングに取り組むことで、5年の壁の一つをクリアできる。

記述問題に慣れる。

開成中学の入試対策に記述問題トレーニングは不可欠である。

5年生になると、教材・問題集・テストで記述問題の割合が増えてくるが、徹底的に取り組んで、解くための手順・方法を固めていってほしい。

取り組み時の注意点を以下にあげる。

  • ポイント一つにつき20字程度で記述する。30字以上の記述は、ポイントが2つ以上ある可能性が高い。
  • ポイントを決めたら、まず、字数にあまりこだわらず、文にしてみる。細かい字数は、後から調整する。
  • 傍線部分を言い換えさせる問題では、分かりにくい部分(指示語・比喩など)を傍線部分の前後から補って言い換えて、しっかり傍線部分の意味を押さえることが重要である。さらに、重要なことばを言い換えた表現を探したり、具体的に内容を説明する部分を探し、該当する部分を言い換えて答案を作成していく。
    たとえば、「そんな他人の夏の一つ」とはどういうことか。という問題で、まず、「そんな」に注目し、どのようなことを指しているのか探す。
    それは「他人」が関係した「夏」の出来事だと確認して、直前の「他人」に関係する「夏」の「出来事」を
    ① 事実(誰が、何をした)
    ② 理由
    という形でまとめればよい。
  • 論説・説明文・随筆の記述問題では、文中の言葉を使って答案を作成するのが基本である。
  • 気持ちを問われる記述問題では、まず、気持ちを表すことばを決めてから、理由を考える。たとえば、「亮介は心の中で、兄をなじった。」とあるが、この時の亮介の気持ち。が問われる問題では、まず、気持ちにかかわる表現に注目する。ここでは、「なじる」=①責める、批判する、という意味を確認し、直前のできごとから、その気持ちになった理由を考える。直前の出来事として、兄が、亮介の友達が持ってきたメンコを取ってしまったことがあるので、この行為が責められる理由を考える。そのメンコは、友達の宝物であったことと結び付けられる。以上から、「できごと→事情→気持ち」という形で答案を作成する。
  • 記述答案は、型・文末表現に注意しながらまとめる。
    たとえば、「~ではなく、~である。」、「~に対して、~であるという違い。」
    「~である一方で~でもある。」、「~ので、~な気持ち。」など。

使用している教材・問題集で記述問題が少なかったり、簡単に解けてしまう場合は、記述中心の問題集で補う事が望ましい。たとえば、「記述完成」Ⅰ、Ⅱ、Ⅲがあげられる。Ⅲは、難関校の長文記述中心なので、5年生時点では、Ⅰ・Ⅱまで取り組めば十分である。

答案作成に当たっては、問題の指定に合わせて、答案表現の型を整えることを意識したい。

また、答案表現に必要な気持ちを表すことばを増やし、どのようなときにどのような気持ちになるのか、という型もつかんでいこう。

6年生前半~夏期講習まで

5年で積み重ねてきたことを、入試水準にまでつなげていく時期である。

6000字を越える超長文、レベルの高い文章に取り組む。

開成中学以外の入試問題で、文章慣れをしていこう。

長さ、文章のレベルとして参考になるものとして、武蔵、海城、渋渋、渋幕の過去問があげられる。一読しただけでは、意味がとれないような文章にも食い下がっていきながら、理解のてがかりをつかんで、何とか問題に取り組んでいく、といった辛い学習も乗り越えていかなければならない。スピードアップも重要だが、精読して文章や部分部分の意味を正確に解釈することなしにスピードをあげようとしても、得点力にはつながらない。あくまで、「読める」うえでのスピードアップである。

なお、入試でとりあげられることの多いテーマについて整理したものとして、中学受験 必ず出てくる国語のテーマ  著者 小泉 浩明(ダイヤモンド社)があげられる。

記述問題のとりくみ力アップ。

入試の過去問題集から、記述問題だけを拾い出して、解いてみること。

苦手パターンの問題、たとえば、心情の理由記述が苦手であれば、その種の問題だけを拾って、集中的に、解き方を確認しながら解く。同種の問題を大量にこなすことで、どうすれば解けそうか、どのような答案を作ることが求められているか、といった感覚が養われていくことが期待できる。

できれば、答案は、添削を受けたい。模範答案との比較だけでは、どこがポイントなのか、なぜ、この答案ではいけないのか、どこが得点につながるのか、などを判断することが難しい場合も多い。添削指導のプロの先生に見てもらうことが一番である。

その際、余計な部分、足りない部分、点にならない部分、点になる部分を教えてもらい、どうすれば点の取れる答案が作れるのか、その手順まで教わりたいところである。

「答えを教えてくれる先生」ではなく、「答えへのたどりつき方を教えてくれる先生」を見つけて、徹底的に鍛えてもらおう。

自力で、何とか力をつけていきたい、という場合には、練り上げられた教材を使用することが望ましい。たとえば、論理エンジン「読解・作文トレーニング」や、啓明舎の「読解の応用」・「読解の完成」で、論理的思考力、記述力、思考力を養っていこう。 演習量を確保するための問題集としては、「塾で教える国語・実戦問題集(論理的文章、文学的文章)」(旺文社)がある。

自分で記述問題に取り組んだ場合の答え合わせの際には、まず自分の答案と模範答案を比べること。×の場合、どこが模範答案と違うのかチェックする。文章と照らし合わせて、なぜ、模範答案がそうなっているのかの根拠を確認する。解説を読んで、その答えとなる理由を納得する。どのような考え方、解き方をすれば、正答できるかまで考えたい。 答案は、納得いくものができるまで、何度でも書き直す(消さずに、順に書き加えていく。部分でなく、全体を書き直す)。模範答案を写すのではなく、自分なりに点数の取れる答案を作り上げることが目標となる。

6年生10月以降~

開成中学に向けた対策を徹底する時期である。

方針・方法を定めて過去問を解く。

志望校別のクラスが設置される塾であれば、参加して、最大限に活用する。

過去問のとりくみ方

1、 時間を意識する。
  • 時間を計る、50分以内で解く。時間配分を考える。
  • 何にどれくらい時間がかかっているか見ていてもらって、時間の使い方に改善の余地がないか考える。
  • 解き終わらない場合は、時間内でどこまでできたかがわかるようにしたうえで、全問解ききるまで時間を延長し、トータルでかかった時間を記録しておく。
2、解答用紙は、原寸大のものを使う。
  • 繰り返し使うものなので、問題と解答用紙はコピーしてセットにしておく。
  • とりくみ時の読み方・解き方がわかるように書き込み、線引きなど手を加える。
  • 何回目の取り組みかわかるようにして保管し、取り組みに進歩が見られるか、課題が克服されているか、比較できるようにする。
3、あまりさかのぼって解く必要はない。
  • 最新年度から5~10年くらいまでが目安。入試問題は、範囲、傾向が変わっていくものである。時代時代のトレンドもある。直近の傾向をつかむことは重要なので、あまりさかのぼると、かえって混乱して感覚が狂うこともある。
4、問題の解き方について指導を受ける。
  • 開成中学受験生の指導経験が豊富なプロの先生に見てもらうことが理想。
  • 的確な答案添削をしてもらうことができる。目指すレベルと自分のレベルとのギャップをうめる道筋をアドバイスしてもらおう。
5、対策メモを作る。
  • 開成中学の入試問題に取り組むに当たっての工夫、方法をメモに書きためていく。
  • 文章を読むとき、問題を解くときの注意点や、問題形式別の取り組み方、記述答案の作り方などをまとめておき、直前に効率的に見直せるようにする。
6、繰り返し解く。
  • 最低三回転程度。解くたびに、進歩・改善していっているかどうか確認する。
  • 手際よく、効率的に、正確に取り組むことを意識し、手順面でのタイムロスをなくしていく。記述答案の仕上がり度もあげていく。

志望校別テストを活用する。

この時期は、大手塾を中心に、志望校別の公開テストが行われる。

実際に2月1日に競うことになるライバルたちとの相対的な位置関係を知り、油断せず力をつけていくためのきっかけとして活用しよう。

例として、

  1. サピックスの学校別サピックスオープン
  2. 四谷大塚の学校別判定テスト
  3. 早稲田アカデミーのNN学校別最難関オープン模試

があげられる。

最新の傾向に照らして問題が作成されており、弱点を発見してうめておくための手がかりとなる。また、過去問慣れしてきた状況で、気が緩むことも防止できる。