中学受験で成功する「黄金法則」とは

麻布中学の国語の大きな特徴として

  1. 「物語文からの出題が基本パターンである」
  2. 「長文読解問題1問であり文章量が多い」
  3. 「少量の漢字と選択問題を除いて、ほぼ記述である」

ということが挙げられる。

1と2 に関して

最近の傾向として他の御三家・難関校をはじめ中堅校に至るまで、論説文・随筆文を出題し、文章の難易度も上がっている。ところが 麻布はそれらの傾向と逆行するかのように物語文、しかも比較的読みやすいものが多い。 実際、平成24年は「町に住んでいた都会育ちの少年が父と母の不和から夏休みに山の近くのおじさんの家あずけられ、田舎での実体験に即した生活を経験するとともに、母の幼少期のことを知ることで心理的に成長し、変化していく」という内容であり、時代背景・主人公の年代・生活体験を考慮すると一般の受験生にとって決してわかりにくいものではなく、むしろ等身大の自分をそのまま投影することで比較的容易に文章内容を把握できろ設問だった。

ここで麻布中学が出題において意図しているものいったいなにであろうか?

なぜに物語文を出題するのであろうか?

推測の域をでない部分もあるが、私の分析は以下である。

著者自身、麻布中学・高校出身なのでよくわかるが、麻布は自由闊達な校風をもつ学校である。校則すらない。校則=ルールがない状態で自由を謳歌するためにはお互いがお互いを尊重する必要がある。お互いを尊重するためには相互に自分のことだけではなく、相手の心理的・物理的状態を考慮して、自己がどのような行動をとるべきかを確定する『洞察力』が必要不可欠になる。

実はその『洞察力』を見極めたいというのが麻布中学の国語の出題の意図なのである。

複雑な論説文・随筆文は文章そのものからあくまでその文章の筆者の言わんとしていることを性格に読み取るのが建前である。そこでは受験生はどんなにトップレベルの生徒でも「受身」の姿勢で筆者の主張を「探し」その主張を「受け入れ」「まとめる」ことに終始せざるを得ない。それが国語の一般的なスタイルであるしそうしなければ得点が取れない仕組みなのだから仕方がない。だが、それはあくまで「一方的な情報の受信」とその「要約」である。

だが、麻布中学が求めている国語力は、そんなこじんまりとまとまったものではないのである。

「国語」に代表される「言語」とは、そもそも「お互いの具体的状況をある程度抽象化して相手に理解できるように伝える」ものであるはずである。

であるから、「真の国語力」とは「文章という状況説明全体から相手方(筆者ではなくその状況におかれた登場人物)の心理的・物理的状態を読み取る力」=『洞察力』に尽きることになる。

漢字、語句、文法、ことわざ、慣用句、論理的文章読解等々、国語の学習で必要とされている様々な事柄は煎じ詰めればこの『洞察力』に行き着くのである。

だからこそ、麻布中学は物語文を出題しつづけるのであろう。

3に関して、

記述が多いのも麻布中学の国語の大きな特徴である。

この点も麻布中学の出題意図である、受験生の国語力=『洞察力』を把握したい、という点から説明できる。 ここで意識すべきことは、「受験生に記述答案を書かせることによって受験生がどれだけ物語の内容を理解し、登場人物の状況や心理状態を洞察しているかを学校側が把握したいということである」ということである。 ただ単に選択肢を選ばせたり、抜き出しをさせるよりは、受験生の考えていることを自分の言葉で記述させる方が、学校が受験生の国語力、ひいてはものごとに対する考え方を把握できるのは当然である。 学校側も1000人近くの受験生の記述吟味・採点するのは非常に骨の折れる作業であるはず。にもかかわらず、敢えて記述を多数出題しているところに麻布中学の矜持が垣間見えるといえよう。 (非常に厳しい言い方だが)麻布中学を志望する受験生ではっきり言って向いていないと言えるのは「こんなに記述があって面倒くさい」という考え方の受験生である。 これに対する学校側からの答えはおそらく「いやなら書かなくてもいいですよ。」であろう。(理由は『講師の一言』を参照して欲しい) 逆に向いている受験生は「記述形式で答案を作ることで、自分の文章の捉え方・考え方を正確に評価してもらえる!」「記述を書けるということは、自分のメッセージを麻布中学の先生に送れるということだ!」と考えることができる生徒である。 これは筆者自身が受験したときも、入学してからも、また志望する生徒を指導してきたなかでも、さまざまな場面で筆者が身にしみて感じてきたことである。

このような、他の学校と少々レベルの異なった麻布中学の国語の出題傾向はその独自性かつ根本性がゆえに今後も変わらないものと考える。

簡単ではあるが、文章の傾向について。 設問の傾向に関しては、他の具体的な対策とともに『対策』を参照していただきたい。